EVERY GOOD BOY DESERVES FAVOUR (童夢)

ムーディブルースといえば、反射的にこのアルバムの老人と子供の絵が浮かんでくる。激しい雨のあと、異国風の音楽と美しい旋律で始まる導入部から、甘い歌声にうっとりとなった。暗い部屋で電気も付けずに繰り返し聴いていたことを思い出す。友だちとけんかした夜だったろうか。ささやくような、語りかけるような歌が続いて、閉ざされた心が少しづつなごんでいくのだ。だが、優しいだけではない、世界を感じさせる何かがある。おとなになってからは、このアルバムをミュージカルにしたいなと思うようになった。ひとりの青年が主人公で、空港から降り立ったところから物語は始まる。巡り逢いと別れがちりばめられていて、最後にはひとり、また旅立つのだ。そういう意味でいろんな、想像力をかきたてる魅力をもっている作品だといえるだろう。