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BLUE         2000.10.08    







                 限りなき碧
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.
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ああ、 
                 望んで止まなかった 
                 人の夢が 此処にある 
                 
                 碧に落ちる 
                 眠りに落ちるように 
                 滑らかに 
                 
                 全てを捨て去ったとき 
                 あらわれる現実 
                 今は忘れさせて 
                 
                 秋涼 
                 限りなき碧にのみこまれる 
                 身を切るような寒さに非ず 
                 肌をなでるような優しい風 
                 色だけを 
                 求むるならば そは碧き 
                 限りなき碧き大空 
                 
                 存立する二つの記憶 
                 白濁する二つの意識 
                 待ち焦がれた最期は儚く終り 
                 そして 続きが始まる 
                 
                 見上げれば 飛行機雲 
                 細くのびる人工の軌跡 
                 








目を閉じてのみこまれそうな                 
.
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..
白い線が突っ切ってゆく                  
碧の谷間を                  
悠々と滑ってゆく                  
堅い翼を短く広げ                  
堅い殻に覆われた鳥                  
音もなく                  
碧の谷間を滑ってゆく                  
                  
Io dipinpere di azzurro                  
此の時代 此の場所に                  
生を受けた事を                  
この碧が証しとし                  
目を閉じて感じるささやかな幸せ                  
Io passare una notte in bianco                  
alzare lo sguardo al cielo                  
再び見ゆ 碧の記憶                  
忘ることなき碧の海を泳ぎ                  
向こう側に着く                  
目を閉じてのみこまれそうな                  
一面に広がる le cielo                  
すべての感覚を失い                  
目の前のものは消え                  
ただ広がる、一面のle celeste                  
目を閉じて覚えた                  
ひどく騒がしい鼓動                  
高く視界の隅に浮く                  
ずっと同じ顔のみ見せる                  
孤独に在る従者                  
Io notare la luna pallida                  
                  
                  
私は青く塗る                  
私は眠らずに夜を明かす
                  
空を仰ぐ
                  
青空、青
                  
青白い月に気付く
                  





                 五感を奪いとってゆく
.
.
.

                 両腕を高く掲げ 
                 碧の飛沫を投げ 
                 迫り来る未知なる影 
                 
                 捕らえんと頭を下げ 
                 辛うじて視線で紮げ 
                 代わりに起こる時化 
                 
                 天を翔け 
                 地を駈け 
                 
                 果て迄行け 
                 この代償を受け 
                 そして碧よ 届け 
                 
                 五感を奪いとってゆく 
                 膨大なまでに 碧落 
                 
                 近付けば近付く程 
                 遠ざかってゆく 
                 天よりこぼれ落つる飛沫でさえ 
                 指の間を擦り抜けていく 
                 あまりの碧の美しさに 
                 目がくらみ立ち尽くす 








心が碧に流される                 
.
.
..
氷室の奥より取り出したる                  
冬の残りの塊のように                  
                  
冷たき人よ                  
微笑い給え                  
                  
時しも空が泣いた晩                  
研ぎ澄まされた心で                  
冷たき人よ                  
貴女は何を悲しむのか                  
                  
窓を                  
硝子の向こうを御覧                  
あのように透けた空を                  
冷たき人よ                  
知り給え                  
                  
貴女の呟きはやがて                  
時流となって                  
街灯の下に溢れるだろう                  
だから                  
微笑い給え、冷たき人よ                  
                  
窓の外を御覧                  
求めて止まない碧が                  
貴女の心を洗う色が                  
すぐ近くまで来ている                  
冷たき人よ                  
自失を怖れ給え                  
                  
光りよりも疾く                  
それは碧を架けるだろう                  
虹の橋の反対側に                  
貴女の影が在る                  
決して御手を汚されるな                  
微笑い給え                  
冷たき人よ、永く眠り給え                  


















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